育成就労の農業分野|
転籍制限1年・日本語要件・受入れ上限2万6,300人
はじめにお読みください
本記事は、2026年1月23日に閣議決定された分野別運用方針(別紙13「農業」)と、 出入国在留管理庁の「育成就労制度の概要」(令和8年7月改訂)に書かれている内容をもとに整理したものです。 個別の判断は、育成就労制度運用要領や最新の公表資料をご確認のうえ、監理団体・専門家にご相談ください。
この記事の要点
- 本人の意向による転籍は、農業分野では転籍制限期間1年。ただし転籍には試験2つの合格が必要
- 入国時に必要な日本語はA1相当以上(JLPTのN5等)。試験合格の代わりに日本語講習の受講でも可
- 業務区分は耕種農業・畜産農業の2つ。主たる技能は施設園芸・稲作畑作・果樹・養豚・家きん・養牛の6つ
- 受入企業には「労働者を6か月以上雇用した経験」と労働基準法に準拠した労働時間・休日の待遇が課される
- 育成就労の受入れ上限は2年間で2万6,300人。上限に近づくと認定が一時停止される仕組みがある
1. 転籍:農業分野の制限期間は1年
育成就労では、技能実習になかった本人の意向による転籍(受入企業の変更)が、一定の要件のもとで認められます。 受入企業にとって最大の関心事ですが、農業分野では次のように定められました。
| 項目 | 農業分野の内容 |
|---|---|
| 転籍制限期間 | 1年 |
| 必要な技能水準 | 育成就労評価試験(初級)に合格していること ※1年経過時までに求められる水準と同じ |
| 必要な日本語能力水準 | 「日本語教育の参照枠」A2.1相当以上の試験(JFT-Basic)に合格していること |
「1年たてば誰でも出ていける」ではありません
転籍制限期間が過ぎただけでは足りず、技能の試験と日本語の試験の両方に合格していることが条件です。 入国時に求められるのはA1相当(N5等)ですから、転籍するには1年の間にもう一段上のA2.1相当まで日本語を伸ばす必要があります。 このほかの要件(同一の業務区分であることなど)は育成就労法および運用要領で定められています。
裏を返すと、1年目にどれだけ育成に手をかけたかが、そのまま転籍の分岐点になります。 介護分野の制限期間が2年であるのに対し、農業分野は1年である点も押さえておきたいところです。
2. 求められる技能・日本語の水準
農業分野で、いつまでに何を満たす必要があるかを一覧にすると次のとおりです。育成就労の期間は3年間です。
| 時点 | 技能水準 | 日本語能力水準 |
|---|---|---|
| 就労開始まで | 定めなし |
A1相当以上の試験に合格 (JFT-Basic、JLPTのN5等) または認定日本語教育機関等での相当する日本語講習の受講 |
| 1年経過時まで | 育成就労評価試験(初級) | A1相当以上 |
| 本人意向の転籍 | 育成就労評価試験(初級) | A2.1相当以上 |
| 育成就労の終了まで | 育成就労評価試験(専門級) | A2.2相当以上 (JFT-Basic、JLPTのN4等) |
| 特定技能1号へ | 農業特定技能1号評価試験、または育成就労評価試験(専門級) | A2.2相当以上 |
業務区分と主たる技能
農業分野の業務区分は耕種農業・畜産農業の2区分で、特定技能制度と同一です。 育成就労では、この区分ごとに「主たる技能」が設定されており、試験もこの単位で用意されています。
| 業務区分 | 主たる技能 | 試験(1年経過時まで/終了まで) |
|---|---|---|
| 耕種農業 | 施設園芸/稲作・畑作/果樹 | 育成就労評価試験(初級) /育成就労評価試験(専門級) いずれも主たる技能ごと |
| 畜産農業 | 養豚/家きん/養牛 |
育成就労計画に沿って、3年間を通じてこの主たる技能を修得するために必要な業務に計画的に従事させることが求められます。 なお、日本人が通常従事する関連業務(農畜産物の製造・加工、運搬、販売、冬場の除雪作業など)に付随的に従事することは差し支えないとされています。
3. 受入企業(育成就労実施者)に課される条件
分野別運用方針では、農業分野の受入企業に対して次の条件が特に課されています。技能実習の感覚のままだと見落としやすい項目です。
-
労働時間・休日・休憩・時間外の割増賃金の待遇が、労働基準法に準拠していること
農業は労働基準法上、労働時間・休憩・休日の規定が適用されない事業とされています(労働基準法第41条)。 しかし育成就労で受け入れる場合は、これらについて労基法に準拠した待遇が条件になります。就業規則や労働条件通知書を先に見直しておくべき項目です。 -
労働者を6か月以上雇用した経験(またはこれに準ずる経験)があること
直接雇用で受け入れる場合の条件です。これまで家族経営のみで人を雇ったことがない農家は、この点から確認が必要です。 -
入国後講習で「農作業安全に関する指導者」等による講習を受講させること
農業分野に固有の上乗せ条件です。 -
育成就労の分野別協議会に対し、必要な協力を行うこと
協議会への加入は認定申請の際にも確認されます。 - 農林水産省またはその委託を受けた者が行う調査等に協力すること
-
本人の求めに応じ、実務経験を証明する書面を交付すること
特定技能2号では実務経験が要件になるため、証明書の発行を求められる場面が出てきます。日々の作業記録を残しておくと、この証明がすぐに出せます。
4. 労働者派遣が認められるのは農業と漁業だけ
育成就労でも特定技能でも、労働者派遣の形態が認められているのは農業分野と漁業分野のみです。 冬場は農作業ができないといった季節による繁閑があり、同じ地域でも作目によって収穫・定植のピークが異なるため、 農繁期の労働力確保や産地間での労働力の融通に対応する必要がある、というのが理由として示されています。
派遣形態で受け入れる場合、派遣先となる事業者には次の条件があります。
- 労働者を6か月以上雇用した経験がある者、または派遣先責任者講習等を受講した者を派遣先責任者とすること
- 育成就労の分野別協議会に対し、必要な協力を行うこと
- 農林水産省等が行う調査等に協力すること
5. 受入れ上限は2年間で2万6,300人
分野別運用方針では、分野ごとに受入れ見込数が定められ、これが受入れの上限として運用されます。農業分野の数字は次のとおりです。
| 区分 | 人数 | 期間 |
|---|---|---|
| 育成就労外国人 | 2万6,300人 | 令和9年度から2年間(令和10年度末まで) |
| 1号特定技能外国人 | 7万3,300人 | 令和6年度から5年間(令和10年度末まで) |
| 農業分野全体 | 9万9,600人 | 令和6年度から5年間 |
上限に近づくと、認定が一時停止されます
受入れ見込数を超えることが見込まれる場合、農林水産大臣は法務大臣・厚生労働大臣に対して 育成就労認定の一時停止を求めることとされています(特定技能では在留資格認定証明書の交付停止)。 受入れを予定しているなら、申請時期を後ろ倒しにしないほうが安全です。 申請期限は育成就労計画の認定申請はいつまで?にまとめています。
なお、この2万6,300人という数字の背景には、農業分野の人手不足の見通しがあります。 令和5年度の就業者数138万7,000人に対し、令和10年度には97万9,000人まで減少し、38万9,000人程度が不足する見込みです。 生産性向上(約20万9,400人分)と国内人材の確保(約8万人分)で緩和してもなお、9万9,600人程度が不足するという計算です。
6. 技能実習を続ける場合の経過措置
施行日(2027年4月1日)の時点で技能実習を行っている場合は、施行後も引き続き技能実習を行うことができます。 ただし注意点があります。
- この場合は技能実習制度のルールが適用され、技能実習から育成就労に移行することはできません
- 施行日時点の1号技能実習生は、施行後も2号技能実習に移行できます
- 3号への移行は、施行日時点で2号を1年以上行っている者に限られます
- 施行日前に技能実習計画の認定申請をしている場合、施行日以後に技能実習生として入国できる場合があります(施行日から3か月以内に開始する計画に限る)
制度ごとの様式の違いは、技能実習から育成就労へ|様式の対応表と変更点で整理しています。
まとめ
- 農業分野の転籍制限期間は1年。ただし転籍には育成就労評価試験(初級)と日本語A2.1相当以上の合格が必要
- 入国時の日本語はA1相当以上。試験の代わりに認定日本語教育機関等の講習受講でも可
- 業務区分は耕種農業・畜産農業の2つ、主たる技能は6つ。育成就労の期間は3年間
- 受入企業には労基法に準拠した労働時間・休日の待遇と6か月以上の雇用経験が課される
- 受入れ上限は2年間で2万6,300人。上限が見込まれると認定が一時停止される
出典
- 育成就労に係る制度の運用に関する基本方針・分野別運用方針|出入国在留管理庁(別紙13「農業」、2026年1月23日 閣議決定)
- 育成就労制度の概要(令和8年7月改訂)|出入国在留管理庁
- 育成就労計画認定施行日前申請|外国人技能実習機構
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AgroSupport は農業分野の外国人材受入れ管理システムです。 日々の作業記録を残しておくと、実務経験を証明する書面の作成や、年度末の実施状況報告書(育成就労の様式14号にも対応)が、公式様式への直接記入で出力できます。 技能実習と育成就労の対象者を区別して管理できるため、経過措置で両制度が並ぶ期間にも対応しています。